根津美術館(東京都港区南青山) 訪問-東京圏の美術館・博物館(2)

[第237回]
   「肩肘はらずに美術館♪」 の第2回。
  東京都港区の根津美術館に行ってきました。 「根津」というと、文京区の東大 本郷キャンパスの北あたり、文京区根津 に、根津神社http://www.nedujinja.or.jp/main/k4.html がありますが、根津美術館があるのは、港区南青山6丁目、東京メトロ 銀座線・半蔵門線・千代田線の「表参道」駅から南の方に少し歩いた所にあり、根津 嘉一郎 という人が集めた美術品を根津さんの自宅があった場所に美術館を建設して展示しているというもので、文京区の根津神社とは特に関係はないようです。 今回は、《「ほとけの教え とこしえに」仏教絵画名品展》http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html が開催中でした。 
  
   東京メトロ「表参道」駅を地上に出て西に進むと左手に青山学院があります。南に進むと根津美術館。↓
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  北側の道路と建物の間の通路が、これがなかなか素敵なんです。↓
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  東京メトロ「表参道」駅から南に歩いてくると、この建物の東よりで信号を渡ることになりますが、そこから↑の通路を西に進んで美術館の入り口に到達することになるのですが、南に庭園が配置され、建物は北に寄せて建てられているので、道路からのアプローチを敷地内で長くとることはできませんが、北側の道路に沿って↑の通路があり、これを進んでいる間に美術館へ入る心づもりができてくるような感じがする、そういう通路です。
  根津美術館は、根津嘉一郎という財界人が蒐集した美術品を南青山の自宅があった所に美術館を建てて展示し、庭園も公開したというものらしい。 美術館の館内については、ホールは撮影してもいいと言ってもらいました。展示物も興味深いものが多いのですが、↓のように建物自体もなかなか素敵な建物です。
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↑ 1階ホール
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↑ 地階 地階といっても、道路と同じ高さの階を1階と言えば「地階」になるということで、「地階」から庭園への出入口があり、その部分を基準にすれば1階で、道路と同じ高さの階が2階になります。
  《根津美術館HP 施設概要》http://www.nezu-muse.or.jp/jp/about/outline.html を見ると、≪設計・監理 隈研吾建築都市設計事務所   施工 清水建設株式会社 ≫と出ています。
※ 《ウィキペディア―隅 研吾(くま けんご)》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%88%E7%A0%94%E5%90%BE
  《隈研吾建築都市設計事務所 作品ギャラリー 根津美術館》http://www.japan-architects.com/ja/kengokuma/projects-3/根津美術館-25975
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↑ 庭園から見た 根津美術館

   雁屋 哲 作・花咲 アキラ 画『美味しんぼ』に、「究極の披露宴 (前・中・後)」という話があり〔雁屋哲 作・花咲アキラ 画『My First BIG 美味しんぼ [新生活大応援! 春のごちそう編]』2001.4.13.小学館、 もしくは、 『My First BIG Special 美味しんぼ 究極VS至高 宴の料理』2015.6.3. 小学館 所収〕、その「後編」に、≪ 米津財閥の創業者、米津孝太郎の遺言で、昔の大名屋敷だった この邸宅を美術館にし、四万坪もある庭もそのまま保存してあります。≫という「米津美術館」なるものが登場するのですが、これは、もしかして、根津美術館がモデルなのかな? と思ったのですが、『美味しんぼ』に出ている絵と似ているようにも思いますが、そのままでもないようにも思えます。 美術館の建物は、HPの《美術館略年表》http://www.nezu-muse.or.jp/jp/about/history.html によると、今の新本館が竣工したのは、2009年2月ですから、『美味しんぼ』の「究極の披露宴 後編」が書かれるより後ですから、『美味しんぼ』は、それより前の状態を参考にして書かれたものなのかもしれません。
   『感動の美 根津美術館 』(2010.10.1. 世界文化社)には、≪ 根津美術館がある敷地は、古地図によると江戸時代は大名屋敷があったところで、根津嘉一郎が起伏に富むこの土地を気に入り、自邸として入手した。 当時は江戸時代からの豊かな自然が一帯に残っていたといわれる。 嘉一郎はここを庭園として整備するにあたり、山や渓谷、池泉などをそのままに、自然の趣を残すことを望んだ。 ・・・≫と書かれています。
  『美味しんぼ』の「究極の披露宴 後編」に出ている「米津美術家」は根津美術館そのものではないとしても、根津美術館をモデルとして考えられた話なのかもしれません。 他に、東京の庭園のある美術館として、五島美術館http://www.gotoh-museum.or.jp/museum/architecture.html があり、日本におけるアール=デコ建築の代表と言われる東京都庭園美術館http://www.teien-art-museum.ne.jp/# も名前の通り、庭園がありますから、そういった庭園のあるいくつかの美術館を参考にしたお話かもしれません。
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↑ 茶室 弘仁亭(こうにんてい)
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↑ 池や小川の水は、水道の水か井戸水を動力で流しているのかと思ったのですが、『感動の美 根津美術館 』(2010.10.1. 世界文化社)を見ると、≪ 庭園が位置するのは、もともと渓谷のような地であった。 庭内には現在でも湧水が何か所かあり、この水によって池水が豊かに保たれ、庭の木々が育まれている。≫と書かれている。
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↑ 薬師堂 と 竹林 ≪根津美術館八景≫
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↑ 茶室 被錦斎(ひきんさい)
(↑ クリックすると大きくなります。大きくして見てください。 上の方に「斎錦被」と書かれています。これは右から左に読みます。)
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↑ (左)茶室 弘仁亭(こうにんてい)  (右)無事庵(ぶじあん)

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↑ 庭園内の喫茶室 「根津カフェ」
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↑ 庭園から見た 根津美術館

   建築屋の仕事をしてきましたので、建築を見学に行くことは何度もありましたが、建物を目的に行ったのではなく、その建物が誰の設計で建てられたかといったことを知らずに行って、なかなかいい建物ではないかと思い、後から調べて誰々の設計によるものだったか・・と思ったものもあれば、有名建築家の設計による有名建築物なので見ておいた方がよいと思って見に行って、もうひとつ・・と思ったものもありました。 私が今までに、建物以外を目的に足を運び、建物は誰の設計によるものと知らず、あるいは調べずに行って、これはいい建物ではないか、なかなかのものではないかと思ったものとしては、東京の上野の前川國男設計の東京都美術館〔⇒[第7回]《『C級サラリーマン講座』に学ぶ建築~東京都庁舎・つくばセンタービルへの疑問 〔引っ越し掲載〕 》https://philoarchi2212.seesaa.net/article/201101article_9.html 〕、それから、小川三夫棟梁による千葉県の鋸南町の日本寺の薬師本殿〔⇒[第58回]《鋸山(のこぎりやま)日本寺薬師本殿、及び、大仏、他訪問 》https://philoarchi2212.seesaa.net/article/201111article_4.html 〕があります。 東京都美術館は、企画展の見学を目的に行って、上野公園内の建物としては、国立西洋美術館がル=コルビュジェによるもので、東京文化会館が前川國男の設計として知られているというが、東京都美術館もいい建物ではないか、私は国立西洋美術館より東京都美術館の方がむしろ好きなくらいだが・・・と思って誰の設計か調べると前川國男の設計でした。 鋸山の日本寺は、岩肌に刻まれた大仏が有名ですが、けっこう古くからあるお寺らしいのですが、建物は火災で焼失したことがあるため、国宝や重要文化財に指定されているようなものはなく、建物についてはそれほど期待せずに行って、薬師堂を見た時、これは、建てられたまだ新しいように思えるが、なかなかのものではないのかと、何か建物に「オーラ」のようなものを感じ、説明書きを見たところ、法隆寺宮大工の西岡常一棟梁の弟子・小川三夫棟梁によるものでした。 価値のある建物には、「オーラ」のようなものを感じることがあります。 根津美術館は、比較的最近建てられた美術館なので、比較的有名な「建築家」が設計したものかもしれない・・くらいの気持ちで行きましたが、「隈 研吾」という方は、槇文彦・磯崎新・安藤忠雄などとともに「今、生きている『建築家』のビッグネーム」とされている方だと思いますが、「『建築家』のビッグネーム」なんて、どうせ、ろくなもんじゃないだろ~お・・・などと思っていると、根津美術館はそうではなく、なかなかのものだと思いました。 その建物が誰の設計か知らずに行って、「これはなかなか・・・」と私が思った建物として、東京都美術館・鋸山日本寺の薬師本殿とともに、根津美術館を入れさせていただきたいと思います。 (1)既存の庭園との調和、(2)敷地の制約をむしろ生かした設計、(3)美術館として展示物より建物が出しゃばらないとともに建物にも工夫がある、といったところはすばらしいと思います。〔(3)は前川國男設計の東京都美術館、熊本県立美術館においても感じたものですが、美術館は展示物の方が主役であるのですが、建物が出しゃばりすぎないで、かつ、特色を持たないのではなく、展示物を尊重しながらも建物も特色を発揮しているというところは、美術館建築としての条件を満たしたものと言えると思います。 〕

   もっとも、木村宗信 監修・ペン編集部編著『茶の湯のデザイン』(2009.10.16. 阪急コミュニケーションズ PEN BOOKS)に写真が掲載されている、隈 研吾 によるドイツのフランクフルト工芸博物館の庭に設置されたという米国ゴア社製の“ テナラ ”というガラス繊維を含まないテフロン膜による「TEE HAUS」 と“スーパーオーガンザ”という素材による「浮庵(ふあん)」 は、この本の写真で見ただけでしかありませんが、ひとつの試みなのでしょうけれども、この本の写真で見る限り、正直なところ、茶室としては、少々、違和感を覚えます。

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   但し、周囲を見回すと、木々の梢の上に高層ビルが見えて無粋な感じを受ける場所もあります。↑ 敷地外のことについては、都心の立地を考えるとやむをえないところもあるのかもしれませんが、残念に感じるところもあります。 東大の本郷も、30年ほど前は、都心でありながら静寂な環境があっていいと感じたのですが、最近は建物が増えたとともに、かつてはそれほど高い建物でなかった物が高層の建物に変わり、そして、30年程前は、東大本郷キャンパスの中を歩いた時に、外の建物が見えるということはなかったのですが、最近では周囲の高層マンションが見えて興ざめです。 東大の本郷は30年程前の時点で「伝統的建造物群保存地区」に指定しておいてほしかったような気もしますが、今では手遅れでしょう。
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↑  北側の道路の北西側から見た 根津美術館

  根津美術館の北側というと、たとえば、↓
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のように、「斬新なデザイン」の建物がけっこう多い地域です。 斬新なデザインの建物が多い青山の周囲と、根津美術館の和風の庭園との境界にある根津美術館の建物は、相当、デザインを考えて設計されたものかと思われます。

   根津美術館のはす向かいあたりに、岡本太郎 があるようで、岡本太郎 にも立ち寄ってみたかったけれども根津美術館とその庭園は、一通り見学して散策するだけで十分なボリュームのあるものなので、それは次回以降にすることといたしました。 1日に何か所も行くよりも一期一会の考え、1日1箇所の方がよい、1日に何か所も行くと、「芸術は爆発」すると考え、次回以降にさせていただくことにしました。




⇒《YouTube-岡本太郎 CM 1981年 マクセル 芸術は爆発だ 》https://www.youtube.com/watch?v=m-FP9K1iD-g
《YouTube-「芸術は爆発だ!」「何だ、これは!」  岡本太郎は何者? 2/2 》https://www.youtube.com/watch?v=G9I1hEzv6Hk

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↑  東京メトロ 半蔵門線「表参道」駅。 紫色のラインは半蔵門線色なのですが、その紫と壁面のタイルの「はんなりした緑」が調和して、すてきどすう~う・・・と思ったのですが、いかがでしょうか・・・・。





※根津美術館について
根津美術館HP http://www.nezu-muse.or.jp/
《ウィキペディア―根津美術館》 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E6%B4%A5%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8
《ウィキペディア―根津嘉一郎(初代)》 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E6%B4%A5%E5%98%89%E4%B8%80%E9%83%8E_(%E5%88%9D%E4%BB%A3)
《ウィキペディア―根津嘉一郎(二代)》 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E6%B4%A5%E5%98%89%E4%B8%80%E9%83%8E_(2%E4%BB%A3%E7%9B%AE)

☆ 「肩ひじ張らずに美術館」東京圏の美術館
1.千葉市立美術館(千葉市中央区) https://philoarchi2212.seesaa.net/article/201307article_2.html

   (2016.3.5.) 




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